お口の健康と全身の健康は密接に結びついています。歯科医の本当の仕事は歯を削って治すことではなく、お口の健康管理を通じて皆様の健康維持をお手伝いすることなのです。
日々、わたしたち歯科医が目にしているのは患者様のお口の中です。それは至極当たり前の光景なのですが、物理的にも論理的にも、その奥深くに質の高い健康を実現するための多くの情報やヒントが隠されていることに、どれくらいの人が気付いているでしょうか?
私が患者様に接する時に特に力を入れてご説明するのは、このポイントです。
噛めない、痛い、といったお口の中のトラブルは、通常の歯科治療によって機能を回復させることができますから、そこがゴールのように考えられがちです。
しかし、お口のトラブルが改善してもバランスの悪い食生活が改善されなければ、また虫歯や歯周病を引き起こし、同じ治療の繰り返しになってしまうのです。
つまり、一度治療の終わった良い状態を維持するためには、なぜその症状に至ったのか?という過去に存在する原因を突き止め、取り除くことが最も大切なことであると言えるのです。
歯の磨き方などの毎日のお口のケアがおろそかになると歯周病菌が発生します。すると歯周病菌は毛細血管を通してそれ自身が持つ内毒素を全身に送り出してしまいます。
それを防ぐために口腔ケアを徹底すれば、細菌を体に送り出すリスクが低下するため、重篤な疾患の予防になります。
では、なぜ歯科に栄養学が関わってくるのでしょうか。
口腔内の細菌叢(さいきんそう:細菌のかたまりのこと)は毎日の食事によって変化します。
近年、私たちを取り巻く食環境は、軟らかい高カロリーな食事が増加しているため、その細菌叢が虫歯や歯周病になりやすい性質に変化しがちです。そしてもし、一旦虫歯や歯周病になると、それが原因となり硬いものが自由に噛めなくなり、更に軟らかい食事に依存する、というサイクルに陥ってしまいます。
このスパイラルを断ち切るためには栄養のバランスを整えた食事が必須になり「歯科が栄養学に関わる」という考え方が必要になってくるわけです。
ですから、わたしたち歯科医は歯の機能の維持回復にとどまらず、栄養学的観点からも患者様をサポートする必要があると言えるのです。
歯科医 久保田 知子
2002年 | 日本大学歯学部卒業 歯科医師国家試験合格 |
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2003年 | 港区 済生会中央病院にて研修 |
2005年 | 中央区 デンタルオフィス谷本に勤務 |
2008年 | 千代田区 天野歯科医院に勤務 |
2019年 | 菊竹歯科医院に勤務 |